コラム

不妊治療とは?保険適用の範囲とタイミング

不妊治療を検討する際、「何から手を付ければいいのか」「費用はどのくらいかかるのか」など不安を感じるカップルも多いのではないでしょうか?日本では、2022年4月から不妊治療の保険適用が始まり、不妊治療を始めるハードルも低くなってきています。

本記事では、不妊治療の種類や保険が適用となる範囲、治療開始のタイミングについて解説します。不妊治療を始めるかお悩みの方に、有益な情報をお届けできれば幸いです。

 

不妊治療とは?

不妊治療とは、妊娠を望んでいるのにも関わらず、避妊せずに性交をしても一定期間妊娠しない場合に行う治療です。不妊の原因を特定し、原因に合わせた治療を行うことで妊娠を目指します。日本産科婦人科学会では、一年間妊娠しない場合を不妊症と定義しています。年齢や既往歴に応じて六か月妊娠しない場合でも不妊症と判断することもあります。治療はタイミング法のように自然な妊娠を誘発する方法から、「体外受精」や「顕微授精」など体外で受精を行う方法までさまざまです。近年は凍結胚移植など技術革新が進み、成功率と安全性が高まっています。

 

不妊の原因と割合

女性だけが不妊の原因とされるわけではなく男性にも原因がある場合や、お互いに原因がある場合、原因不明のケースなどに分けられます。国内の統計では女性のみが要因となるケースが約41%、男性のみが要因となるケースが約24%、お互いが原因となるケースが約24%、原因不明が約11%と報告されています。女性による要因として排卵障害、卵管閉塞、子宮内膜症が代表的です。35歳を過ぎると、加齢による卵子の質が顕著に低下し始め、不妊の原因となります。男性では精子をつくる力に問題がある「造精機能障害」や精路閉塞、ホルモンの分泌の異常が挙げられ、生活習慣やストレスも精子の質を左右します。このようにさまざまな要因が絡み合うことがあるため、カップル双方の検査を同時に行い、原因に応じた治療を行うことが効果的です。

 

不妊治療の種類

治療は大きく分けて「一般不妊治療」「生殖補助医療」があります。一般不妊治療には、排卵誘発剤を用いて自然排卵を助けるクロミフェン内服、排卵日を超音波で予測し適切な性交を行うタイミング法、洗浄して濃縮した精子を子宮内に注入する人工授精(AIH)があります。生殖補助医療には、体外受精(IVF)と顕微授精(ICSI)があり、採卵・媒精・培養・胚移植まで一連の流れを行うことが特徴です。胚凍結、アシステッドハッチング(胚が子宮に着床しやすくなるよう、殻にあたる透明帯に小さな穴をあける技術)、精子凍結など技術を組み合わせることで妊娠率を高め、安全性を確保しています。

 

不妊治療を始めるタイミング

自然妊娠率は女性の年齢が上がるにつれ低下し、特に37歳を境に急激に下がります。35歳未満で一年、35歳以上で半年間妊娠しない場合は不妊を疑い、専門医に相談することがおすすめです。月経の周期が不規則であったり、強い月経痛がある場合や、甲状腺疾患や糖尿病など慢性疾患を抱えている場合は、年齢に関係なく早めに病院を受診することが望ましいです。男性も勃起障害や精液の検査で異常が疑われる場合は同時に検査を受けます。

 

不妊症セルフチェック項目

女性は月経周期が25日未満または38日超、月経が3か月以上来ない、強い月経痛がある場合は注意が必要です。過度なダイエットによって体重が基準値を大きく下回る場合や激しい運動習慣、慢性的な睡眠不足は排卵障害を引き起こす恐れがあります。男性は朝の自然勃起が少ない、射精量が著しく少ない、陰嚢が常に熱くなる状態で生活している場合は精子の質が悪化しやすいです。夫婦ともにタバコを吸う場合、喫煙しないカップルに比べて妊娠率が約30%低下するとの報告もあります。セルフチェックを行い、自覚がある場合は、生活習慣を見直したり早めに専門医に相談することが望ましいです。

 

男性の不妊治療

男性側に原因がある場合は、泌尿器科の精液検査で、精子の数や動きの良さなど質について調べます。軽度の造精機能障害では、禁煙や減酒、適正体重の維持、抗酸化サプリメント、漢方薬などによる治療で良くなる場合があります。精索静脈瘤(精巣周りの血管がうっ血して、こぶのようにふくらむ状態)がある場合は外科的治療で精子の状態が改善するケースが多いです。精子の数が極端に少ない場合や、射精された精液の中に精子が見つからない場合には、顕微授精に備えて、精巣から直接精子を採取する手術(TESE)を行います。この方法で取り出した精子は、すぐに使うか凍結して保存し、後の治療で活用することができます。

 

不妊治療は保険適用?助成金もある?

2022年4月から、人工授精や体外受精・顕微授精などの治療が公的医療保険の対象となりました。女性が治療開始日に40歳未満の場合は採卵を伴う治療を最大6回、40歳以上43歳未満では最大3回保険適用が認められています。適用回数は胚移植の完了をもって1回と数え、治療の途中で妊娠判定が出た場合も1回とカウントされます。先進医療に指定される「タイムラプス培養」や「子宮内膜受容能検査」は保険診療と併用でき、高額療養費制度も利用可能です。さらに自治体ごとに独自の助成金や休業補償制度、治療と仕事の両立支援セミナーを設けている例もあり、治療開始前に保健センターや会社の人事部へ相談することで、金銭的な負担を大幅に抑えられます。

 

不妊検査とは?医師に相談を

不妊検査では、女性の体がきちんと排卵しているかどうかを血液検査などで調べます。また、卵子や精子が通る通り道(卵管)がふさがっていないか、子宮の中に異常がないかも確認します。男性は精液検査に加え、必要に応じて超音波で精索静脈瘤の有無を確認し、さまざまな角度から精子の質をチェックします。検査による結果を総合して、医師が最適な治療計画を提案することで、妊娠率が上がるだけでなく、身体的・精神的な負担の軽減にもつながります。不妊治療には医学的に治療を行うこととメンタル面のサポートの両方が不可欠です。不妊に関して気になることや不安がある場合は、一人で抱え込まずに病院を受診して、医師に相談をすることがおすすめです。