近年、子宮がんの患者数は増加傾向にあり、特に若い世代でも発症するケースは増えています。しかし、子宮がんは早期発見と適切な治療により順調に回復が見込めます。
本記事では子宮がんの発症リスクや、子宮がんの初期症状の特徴、治療法について解説します。
子宮がんとは?
子宮がんは子宮に発生する悪性腫瘍の総称です。大きく分けると、子宮の出口近くにできる「子宮頸がん」と、子宮の内側の壁にできる「子宮体がん」の2種類があります。子宮頸がんはヒトパピローマウイルス(HPV)の感染が大きく関わっており、感染からがん化するまでに数年以上かかることが多いということが特徴です。一方、子宮体がんは卵巣から分泌される「エストロゲン」という女性ホルモンが過剰に刺激される場合や生活習慣病が関連して発症すると言われています。子宮頸がんと子宮体がんは、発生部位も病態も異なるため、検診方法や予防策も異なる点を理解することが大切です。国内の年間罹患数は子宮頸がんで約一万一千人、子宮体がんで約一万七千人と報告されており、特に子宮頸がんは二十代から三十代の若年層で増加していることが目立ちます。
子宮がんの原因と発症リスク
子宮頸がんは性行為による感染が主経路であり、喫煙や長期に渡るホルモン剤の服用、免疫力の低下が発症リスクを高めます。子宮体がんでは閉経後の肥満状態や高血圧、糖尿病といったメタボリックシンドロームが主な原因です。また、未経産や初潮が早い、閉経が遅い女性ではエストロゲンと関わっていく期間が長くなるためリスクが増えます。そのほか、遺伝性疾患であるリンチ症候群に関連する遺伝子の異常も子宮体がんの発症に関わることが知られています。また、野菜や果物の摂取不足、過剰なアルコール摂取、運動不足などの生活習慣も子宮体がんの要因の一つとなります。
子宮がんになりやすい人
HPVワクチン未接種で複数の性的パートナーを持つ場合や、若い年齢での性行為経験者は子宮頸がんの発症率が高くなる傾向にあります。また、喫煙者は子宮内の免疫が低下することで発症率が上がります。HIVに感染歴がある方も、ウイルスに対する免疫が弱まっているため子宮頸がんを発症しやすいです。子宮体がんでは閉経後に体重が増えた場合や、更年期障害を抑えるためにエストロゲンを補う治療を行った場合、発症のリスクが高いです。糖尿病を放置している場合は、体の中でインスリンというホルモンが増えることで子宮の内側の壁(子宮内膜)を厚くしやすくし、子宮体がんの原因になることがあるため注意が必要です。子宮がんになりやすい人の項目に当てはまる方が初期症状に素早く気づくためには、日常的に月経周期やおりものの変化を観察することが重要です。
子宮がんの症状と進行
子宮頸がんの初期段階では自覚症状がほとんど現れないため、初期症状に気づきにくいです。進行すると性交時の悪臭や不正出血がみられ、さらに症状が進むと骨盤痛や腰痛を感じるようになります。子宮体がんは月経とは関係のない出血や褐色のおりものが初期症状として見られることが多く、比較的早期に気づきやすい傾向があります。末期に至ると大量出血、貧血、下肢のむくみ、排尿排便障害などさまざまな症状が現れ、生活の質が著しく低下します。症状に気づいた段階で医療機関を受診すれば、がんが進行する前に治療を開始できる可能性があります。特に性交後に出血が続く、月経以外の日に鮮血が見られるといった場合、ただちに病院を受診することが大切です。
ステージ(Ⅰ期〜Ⅳ期)ごとの状態
子宮がんの進行度は国際婦人科腫瘍学会のFIGO分類を用いてⅠ期からⅣ期に区分されます。Ⅰ期はがんが子宮頸部または子宮体内にとどまっている段階です。手術をすることで完治できる可能性が高い状態です。Ⅱ期では腟や子宮周りの組織にがんが広がりますが、骨盤までは及びません。Ⅲ期に進むと骨盤や腟の下部、周囲のリンパ節までがんが侵食し、放射線療法や化学療法との併用が必要になることが多いです。Ⅳ期は膀胱や直腸を含む臓器への影響がみられる末期で、緩和ケアを含む治療が検討されます。ステージが進むほど治癒率は低下し、子宮頸がんではⅠ期で約9割、Ⅱ期で約7割、Ⅲ期で約4割、Ⅳ期では2割以下にまで下がるとされます。子宮体がんでも同様にⅠ期の5年生存率は85%以上と高い一方、Ⅲ期以降では大幅に低下します。
子宮がんの治療方法
治療はがんの種類とステージ、患者さんの年齢などによってさまざまです。子宮頸がんⅠ期では子宮全摘術を行うことが基本的です。妊娠を希望する場合には、子宮の本体は残しつつ、がんのある頸部とその周囲の組織、リンパ節の一部を広めに切除する方法を取ることもあります。Ⅱ〜Ⅲ期では放射線療法と抗がん剤治療が推奨されることが多いです。子宮体がんは、Ⅰ期であれば子宮卵巣摘出術のみで済む場合もありますが、がんが進行している場合では術後に放射線や化学療法を追加して行います。
近年承認された「HPVワクチン」は、子宮頸がんの原因となるウイルスのほとんどをカバーしており、小学6年生から高校1年生ごろまでの間に接種を始めると、将来の発症リスクを大きく減らすことができます。
子宮がんを見つけるためには
子宮頸がんでは二十歳を迎えたら二年に一度の「細胞診検査」が推奨されています。細胞診とは、子宮の入り口あたりからごく少量の細胞を採り、それを顕微鏡で調べることで、がんになる前の異常やがん細胞がないかを確認する検査です。HPV検査を併用することで検出しやすくなります。子宮体がんは特有の不正出血が症状に気づくきっかけとなるため、閉経後や更年期以降に出血があれば子宮体がんを疑うことが重要です。近年は、自己採取型HPV検査キットやAI解析を用いた子宮頸部の画像診断など新しいスクリーニング技術も研究されています。自治体の検診クーポンや企業健診を活用することで早期発見につながります。